わんこのおたくガタリ

ここはわんこの語るアニメ、まんがのおたくバナシです! 最近では刀剣乱舞と2,5次元にハマリ中☆ 至らぬところだらけのブログですがどーぞよろしくお願いします♪♪

Entries

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

バジリスク 二次創作 小四郎×朧 (と、見せかけて弦之介×朧←小四郎)

タイトルどおり書きたいと思います。


因みにバジリスク、私はめっきりアニメ派です。

朱絹→小四郎→朧→←弦之介←陽炎

の図式が一番好きです(朱絹姐さんむくわれない;!!)

いやあ、だって小四郎が可愛いのですもにょ!

先日の感想にも書きましたが、小説と漫画では朱絹さんよりな小四郎の気持ちが
アニメだと思いっきり朧に傾いているんですよね。
朱絹さんとのカップリングが好き!って人はだめな話かもしれませんが、小四郎が姫様に懸想?
OKイケるよもちろんさ!!って方のみどうぞ。

コメントや感想などよければお待ちしてます。



私は知人に見られるのはこっ恥ずかしくて死にそうになる人ですのでよろしければ

知人さんはみないでくだせえ・・・

ってなこんで行っきマース!






















「一人は、さみしいと思わんか?」
「さみしい、ですか」
「そう」
少年は言われた意味がわからないというようにきょとんとする。
沢山の鯉が泳ぐ池を見つめながら、少女は愛らしい顔に少しだけ陰りを含んで言った。
「小四郎、人も、けものも同じじゃ。一人ではさみしいし、一匹でもさみしい。だから……」
次に紡がれたその言葉に、幼いおのこは生涯この小さな姫を自らの手でお守りしようと決意したのだ。











伊賀の夏は暑い。

否、夏は何処も暑いものだが、人工的に作られたこの特殊な地形は見通しの良いように辺りの森林を伐採している故に、あまり日陰になるものがないのだ。つまり燦燦と照りつける日光から避けるにも身を隠す場所が限られてくる。

しかしてここは忍びの里。術に磨きをかけんと励み皆その猛暑の中に進んで身をおいて鍛錬を積んでいた。そして、その合間の僅かな休息の時間には屋内に篭っているのが体力を消耗しない一番無難な方法であった。

そんなつかの間に日の光にも負けず縁側に腰を下ろして黙々と木彫りに熱中している若者が一人。
彼の手にした鑿は、慣れた手つきでどこを掘ればよいのか熟知しているように動く。

削りカスが地面に落ちる。
それと共に額の汗も滴る。

じわり、地に染みこむ水滴は瞬く間に太陽の光によって乾燥される。


(喉が、渇いた)


ぼんやりと思うが、若者の手は動き続けたままだ。
彼としては、喉の潤いよりも先に、一刻も早くこの彫り物を完成させたかった。



――ふわり……



不意に一陣の弱い風に乗って甘い芳香が鼻をついた。それと同時に顔を上げた若者は匂いの香る方へと首を向ける。廊下の角から裾の擦れる音が聞こえて、彼は訪れるであろう人物の名をカサカサと乾いた唇の隙間から呟いた。

「朧さま……?」
「小四郎っ」

それと同時に輝く瞳の持ち主が愛らしい顔を覗かせた。
溢れんばかりの幸せの色を放つ微笑みに、向けられた小四郎も当てられたかのように胸が弾む。

「そのように慌てて、どうなされました」
「うふふ、聞いておくれ小四郎!とてもとても良いことですっ!」

興奮しているらしい少女は小四郎と同じ視線になるべく同じように縁側へ膝を着き、きらきらと輝く瞳で小四郎の顔を覗き込む。

しかし、突如間近に迫った相手の紅潮した頬と、その白い首筋から僅かに浮き出た雫に狼狽して目を背ける。
と、少女は不思議そうな顔して小首を傾げる。

「小四郎?」

どうかしたかえ?

尋ねる声音は鈴の鳴るように耳に甘く響いて――

(喉が渇いた)

若者は強く思った。


「すみません、朧様。少し熱にあてられまして……」

「まあ、大変。しかし、この猛暑では仕方ないこと…。小四郎、奥の方で休んではどうじゃ?」

心配そうに寄せられた眉に僅かな幸福を感じながら、小四郎はやんわりと首を振る。
手に持ったままの鑿と彫りかけの木彫りが彼の休息を許しはしない。

「大丈夫です……それよりも朧様、何か俺におっしゃることがあったのでは?」

「あ」

尋ねると、少女は口元を抑えた。
そうでした、と恥ずかしそうに微笑むその姿をこの上なく可憐に思いながら続きを促せば、声を潜めて少女は語り出す。
その時、ほんの一瞬だけ不安そうに揺れた瞳に小四郎は気づかなかった。

「本当はまだ秘密にせよとお婆さまに言われているのですが…」
「え…?」
「小四郎には皆より先に告げておこうと思って」
「…朧さま・・・…お気持ちは嬉しいのですが…」

自分にのみ、という点においてはひどく誇らしい。
だが、この姫の迂闊な部分も知っている若者としては後の彼女の為にも待ったをかけるべきだと思った。
加えてこの里の主、お幻の名が出たのであれば相当に重大な秘密なのは明白。
自分の直属の主である天膳も聞いていない程の話であれば、従者として気が引けもした。

だが、朧は頬を恥らう色に染めてにっこりと微笑む。


「大丈夫です!当事者の私がいいと言うのですから」


・ ・ ・ ・
当事者?

何だろう。
とても厭な予感が若者の頭によぎる。


(まさか――)


浮かんだ考えに困惑しているうちに、目前の少女は嬉々として語りだす。


「今度、正式に」



温い汗が首筋を辿って流れる。



「甲賀の弦之介様と……」


それを気持ちが悪いと思うより先に、少女の唇が動いた。。


「夫婦の杯を交わすこととなりました」




心臓と息が、止まった気がした。
頬を染めた少女が突然知らない女に見えて、小四郎の目の前は暗闇になる。



――嗚呼、なんたる……ッ!


「小四郎?」
「姫様それは……!」

震える声で小四郎は叫んだ。

それは里に対する裏切りではないかと
それは伊賀の皆に対する裏切りではないかと

それは、自分に対する……

口に上る寸でのところで堪えた若者は、自分の愚かな感情に気づいて狼狽する。

(何を、俺は…!)

「小四郎?どうした」

(違う、俺は朧さまをそのような…!)

恐ろしい考えを振り払うように拳に力を込める。
左に握る木彫りがごりりと鳴り、右に持つ鑿がミシリと音を立てた。
必死に気持ちを抑えながら、若者は地面に視線を落とす。

本当なのか、と尋ねたい。
だが事実と言われればそれまでだ。

本当に我らの愛しき姫君は、あの憎き甲賀のものとなるというのか。
小四郎はただただ愕然とする。

「小四郎・・・…?」

縋るように呼ぶこの声も。
おそるおそる袖を掴んでくるこの白い指も。
全てがあの男の物になるというのかと思うと、小四郎は瞼の裏が燃えるように赤くなる気がした。

「小四郎……!」

震える声で名を呼ばれて小四郎は漸くハッと我に帰る。
不安そうな声に思わず視線をやれば、並ぶものなき聖なる瞳に涙の膜がうっすらと浮かんでいた。

「共に喜んでは……くれぬのかえ……?」

その今にも泣き出しそうに歪められた表情に心を痛めながらも、小四郎は背を向け縁側より庭に降り立ち、悲しみに揺れる少女に言った。

「……おめでとうございます」

血の吐く想いを殺しながら、そのままふわりと姿を消した若者に朧はあっ、と悲しげな声を上げる。

「待って、待っておくれ小四郎!!」

追いかけようにも、忍びの術をひとつも持たぬ少女には無理なことだった。













(小四郎……)

いなくなってしまった若者を思って、朧は悲しみの息を吐く。
小四郎と彼女はこの伊賀で兄弟同然に育った仲だ。
因縁深い伊賀、甲賀の仲において縁談を進めんとすることを里の者たちがよく思っていないことは分かっていた。

だが、小四郎ならば、と朧は思ったのだ。

小四郎ならば、ともに喜んでくれるのではなかろうか、と。
そして、それはきっと自分にとっての心の支えとなろう。
先の見えない道を選んだ自分と弦之介との心の支えに……。


『……おめでとうございます』


抑揚のない声音で紡がれた言葉。
それは押し殺した心の痛々しさを思わせた。
あのように言わせたかったわけでは決してない。

ぽろりと瞳からあふれ出した雫が床に落ちるのを見ながら、少女はぼんやりと呟いた。

「私は、なんと愚かな……」

幼馴染という関係を背に、情を盾に、小四郎の伊賀を思う心に泥を塗ったのだ。
あの若者の心根の真っ直ぐさは自分が一番知っているはずなのに――

ぽろりぽろりと零れ落ちる水滴を袖で抑えながら、くすん、と鼻をすすり朧は屋内へと入っていった。














『小四郎……』

姫の微笑みは、まるでこの里の太陽のようじゃと古株たちは言う。
まさしくその通りと、若い衆は皆朧さまを慕い、そしてそんな皆の思いに応えんと心優しい姫君も努力を怠らなかった。

しかし毎日のように修行に励み、それでも一向に上達のしないそれに、才能の有無もあろうと、ついには里の主自らが朧さまの訓練を辞めさせたのだ。


“術の使えぬ主筋の娘”


あの頃の朧さまは、それはそれは哀れであった。
元より彼女の美しさを妬む女たちは勿論、他の者も皆口には出さなかったが落胆と軽い失望を彼女に会うたびに放出していた。

それに気づかぬふりをして、穏やかに微笑む彼女の指が、血を塞き止められ真っ青になるほど強く握られているのに気づいた時、周りと同じように一瞬でも姫を不甲斐ないと思った自分を心底恥じた。
そして同時に、心を抑えて微笑む少女に改めて感服したのだ。


「朧さま……」

口に出せばそれはどんな美しい調べにも勝る甘い響きとなる。
若い小四郎にとって朧さまは何人たりとも汚してはならぬ聖なる姫君であった。

それなのに――

(あの甲賀者が、朧さまを…!)

考えるだけで身の毛がよだつ。

若い姫が、あの男を好いているのは知っていた。
婚約も滞りなく進んでいるのも知っていた。

だが、だがいずれは結局全て破談になるものよ、と多くの伊賀――そして甲賀者と同じように彼もまた考えていたのである。

「朧さま…」

自らの想いの名すら知らぬ小四郎は、それでも抑えきれぬほどの胸の痛みに一人じっと耐えていた。
手の中にある木彫りの人形が悲鳴をあげる。
身を焦がす日が翳りを帯びて、辺りは血色に染まっていくというのに――

喉の渇きは一向になくならなかった。













「お幻さま!今一度お考え直しくださいませ!!」

天膳がいきり立つように自らの主、お幻に食って掛かる。
ついにその晩、お幻が収集をかけて伊賀鍔隠れ衆の皆に朧さまの祝言の旨を伝えたのだ。
天膳は黙ったまま何も言わぬ老婆にますます怒りを増幅させ、おそらくここに集った皆が一番気にしていることをあえてついた。

「朧さまを不幸にさせるおつもりか!?」

それを聞いた瞬間、従者の身分という手前押し黙っていた皆が口々に叫ぶ。

「天膳の申すとおり、甲賀者になど姫様は勿体のうございます!」
「そうじゃそうじゃ!」
「同感じゃ」

念鬼と蠟斎、陣五郎がはやし立てる横で夜叉丸と蛍火も不服そうにお幻を見やっている。

「俺も姫様が甲賀に渡るのは反対です」
「わ、私も…」

「お前たち…」

悲しげに呟く姫の声など彼らには届いていない。
唯一それに反応した彼女の隣に座る朱絹ですら、恐れながら、と不服の意を現した。

「私も、皆と同意にございます…」
「そんな!朱絹お前までっ…」
「如何な弦之助さまと雖もその腕の長さに限度がありましょう。姫様が今の今まで敵対してきた甲賀の里で幸せになれるとは……私には到底思えませぬ…」

お幻に向けていたその瞳を、心底心配げに朧に向けられては何も言うことは出来ない。
それでなくとも、この朱絹という女は常に自分の身を案じてくれる一番の側近なのだ。

「…っ…けれど…ッ!」
「まだお分かり頂けぬか…!貴女様に忠実な朱絹ですらこのように言っているのですよ!よもや、朧さまは本当に甲賀の者などと分かり合えるなど、世迷言を申すおつもりであるまい!?」
「なっ…!天膳…」

朧の瞳は驚きに見開かれる。
いつも口調を荒げはしない男の激昂に、そして自分たちの信じるものの根底を揺るがす発言に恐れおののいてしまったのだ。
早く何か言わねば。思うのに朧の声帯は動いてはくれない。

「て、天膳殿!いくら何でも言いすぎです…!」

見るからに愕然とする朧を不憫に思ったのか朱絹が食って掛かる。
その心遣いに頭の片隅で感謝しながらも、朧は膝の上の己の手を見つめながら泣きそうになるのをただただ堪えた。
そんな女二人を天膳はふん、と鼻を鳴らしただけで一蹴し怒りの矛先をお幻へと再度向けなおす。

「兎も角、私はこの縁談当初から言っていたように断固として反対です。お幻さま、もう一度よくよくお考えになって下さい」

その言葉に里の主は皆の表情を見渡した。
その場にいる全員の一人ひとりの顔に不満の文字を見て取ると、静かに溜息を吐いてお幻は仕方なさそうに頷いた。

「あい、分かった」と。















(朧さま…)

部屋を退出するまで不満を語らなかったのは小四郎のみだった。
そんな若者も決して姫と目を合わせようとはしなかったのに彼女は気づいたであろうかと、小四郎は少し気にしていた。
最後に退出する前に見た彼の人の姿が、酷く打ちひしがれていたせいもある。
愛する伊賀衆から孤立無援の立場になったのだ、無理もないことだろう。

そこまで考えて、小四郎は耳に残る言葉を思い出した。

『共に喜んでは…くれぬのかえ……?』

今にも泣きそうに震えた切ない響き。
彼女はもしかしたら、こうなることを予期していたのかもしれない。

(ああ…)

小四郎はあの姫が大事だ。
とても、とても大事だ。
しかし、彼女の幸せを願えばこそ、甲賀の者は認められないのだ。それは他の者も同じ事。
憎き仇敵、甲賀者たちが自分たちの父子に何をしたか、この恨みは既に理屈ではなく彼らの身体に染み渡り、それどころか魂にすら刻み込まれている。
愛するものが、敵にある。
敵であるものを、愛する。
それはどんな気持ちなのだろう。
小四郎には分からない。分かりたくも、なかった。

ただ、言えるのは……


「俺ならば……」



――姫様をあのように悲しませはしない――



無意識に噤んだ想いの先に、叶わぬ願いを見つけそうで、小四郎はぎゅっと目を瞑った。


「小四郎、いるか」
唐突に外から掛けられた声に一人苦悶していた若者の思考は中断される。
「おります」

返事をするか否かに障子がスウッと開かれ、そこには彼の直属の主、天膳の姿があった。
「天膳さま…?こんな夜更けに何用にございましょう」
じろりと舐めるように己を見つめるその瞳に僅かな怒りを感じ取り、小四郎はひそかに狼狽する。
ついで、主の口から憮然と言葉が紡ぎだされた。

「……小四郎、お前今夜のこと、事前に知っておったな」

疑問ではなく断定的に紡がれた言葉に思わず「え」と零すと短息された。
「な、何故…」
知っていらっしゃるのだ。そういう意味で呟けば、相手は正しく受け取ったようであった。
ふん、やはりな。と独りごつと、端的に説明する。

「簡単なことじゃ。お前だけは今夜の会合でお幻さまが忌々しい話を口にした時も微動だにしなかったであろう?」

相変わらず人をよく見ている方だと感嘆と恐れを感じながら、小四郎は即座に床に手をつき謝罪した。

「申し訳ありません天膳様!」
「ほう、何を謝る」
「は。従者の身分もわきまえずに俺などが天膳様より先にこのことを知ってしまったことです」
「違う」
お前は分かっていない、と天膳は首を横に振る。

「そんなことなどどうでも良い。順列の問題ではなく、何故このような会合が開かれる前に私に報告しなかったかと言う事だ」
「は?」

不思議そうな顔をする若者に男は忌々しそうに言った。

「あの者たちは揃いもそろって朧様に情をかけ過ぎておる。萎れた姫君の姿に僅かなりとも心動かされた者も――」

ちらりと意味ありげに男は若者を一瞥した。

「――おるだろうな。…何にせよ、やつらが朧さまの味方についてしまっては打つ手が限られてくるだろうて」

小四郎は天膳の視線に内心ひどく狼狽する。見抜かれていると、そう思った。
そして同時に強く感服した。この男は未だ姫と甲賀者との祝言を破談させられるつもりでいるのだ。それはひどく心強い。

(だが――そうなれば姫は嘆くのであろうか……)

その後、ねちねちと鼠をいたぶる猫のように小四郎を充分に責め立てた主は漸く満足した顔になり、身を翻した。

「小四郎、過ぎた失態は己の行動で返上せよ。今から忙しくなる。覚悟しておけ」
「は!」

天膳の背を見送りながら勢いよく返事をする若者。
だが、その心は姫の悲しげな顔で占められていたのに彼の主はついに知ることはなかった。

閉められた襖を見つめながらも、小四郎はぼんやりと考えていたのだ。

(天膳様が動きなされる…)

それは心強くもあり、同時に恐ろしい。
そうなればきっと、姫はこれまで以上に胸を痛めることとなるのだから。

小四郎は彫りかけの木彫りを棚から取り出し、見つめた。
未だ無粋な形であるそれは、獣の形をしていた。

(……)

小四郎は腰を上げ、鑿と木彫りと共に静かに自らの部屋から縁側へと出る。
ごりごりと月明かりを頼りに彫っているそれは、徐々に形を成していき――ついには一頭の熊となった。










自分を案じる朱絹を遠ざけて、一人篭った朧の自室には痛々しい嗚咽が響いていた。
それはまさしく火も灯さずに暗闇の中一人悲しみに暮れる彼女の心情を映し出したかのように似合いの風景。
(やはり、無理なのだろうか)
先ほどから朧の頭の中を駆け巡る考え。それは何度打ち消してもすぐにまた浮かび上がってきた。

「…こんな、ことでは……」

愛しい人に合わせる顔がない。
涙に濡れた声で呟くも、弱い自分がひょっこりと頭を出してくる。
それがどうしようもなく歯がゆくて、朧は己の不甲斐なさを恥じた。


しかし、蝶よ花よと愛でられて育ってきた彼女には、これが初めての修羅場であったのだ。
人との諍いを忍の頭目の家に生まれながら好まぬ少女にとってそれは自然と避けて通って来た道。
このような時にどうすればいいのか、諭してくれる筈の側近も今は彼女の味方ではない。
生まれて初めて感じる孤独感は、ひどく辛いものであった。

「弦之介さま……」

助けを求めるように口から出た名は、皆が敵だと言う里の男。
それでも、口に上らせただけで広がる感情の、なんと甘美なことか。

「弦之介、さま……」

その名に少しの勇気をもらい、朧は感情を抑えようと努力する。
自分が成すべきことをしなければ、しかし、どうやって――?
唇を噛み締めて苦悶する朧の耳に、突如板の鳴る音が届いた。


――ギシリ……


それは彼女の部屋の目前だ。
知らぬ内に襖の向こうに誰か来ていたのだと、朧は気づいた。

「誰じゃ?」

返事はない。
不審に思って袖で涙を拭いながらそれを横に引くも、そこには誰もいなかった。

「?」

辺りを見渡しても人の気配はない。だが、ここは忍びの里。自分以外の人間は容易に気配を消すことが出来る。
しかして怪しの術を破る自分の瞳を持ってしても景色の揺るぎはない。
空耳だったのだろうか、と思い直して部屋に戻ろうとした時、足元に何かがあるのに気がついた。
袖を抑えながらそれを拾い上げると、朧は思わず感嘆の息を漏らす。

「まぁ、なんと愛らしい……」

それは木彫りの熊だった。
そしてそれは、彼女によく見覚えのある――兄弟のような若者にいつぞやかにもらった――物と酷似していた。しかし、それは以前の物より、ひとまわりほど小さい。
朧は誰がいたのかを察し、声を潜めて叫んだ。

「……小四郎、いるのだろう…?出てきておくれ…っ」

すっかり闇色に染まった庭に、更に暗い色をした影が彼女の目前に降り立った。その姿は彼女が名を呼んだ人物――小四郎だった。

「……朧さま」

いたたまれなさそうに、そして悲しそうに眉を八の字型に下げた情けない若者の顔に、朧は破顔する。

「小四郎、これはお前が置いたのかえ?」
「……はい」

どこか、逃げ出したいような雰囲気を放つ小四郎であったが、朧は「そうか」と気づかぬ振りをして微笑んだ。

「私にか?」
「はい……」
「どうして?」
「…そ、それは……」

渋々と言った感じで小四郎は口を開く。その顔は晴れないままであったが、若者がようやく自分の瞳と対峙してくれたのに少女は僅かに安堵する。

「朧さまが…一人は寂しいと、仰いなされたので……」
「え?」

きょとん、とする彼女にやはり覚えていられなんだか、と若者は少しだけ悲しくなった。
自分の胸のうちに住まう優しい記憶は彼女にとってさほど重要ではなかったのかもしれぬ。そう思った。

「……以前差し上げた木彫りの熊にも、家族がいたら良いのに、と仰っていたと朱絹殿から聞き申して……」

まごつきながらも懸命に己の考えを話そうとする無骨な若者の言葉に大きな目を更に見開きながら、朧は湧き上がる感情に静かに心震わせていた。

「そうか、これはあの熊の子ども――いや、兄弟かの?」
「は、はい」

お気に召されなかったのであろうか。
しげしげと手に持つ熊を眺められて若者は困惑する。

「……小四郎」
「はい」
「一人は…寂しい。それはきっと、獣も人も変わらぬ。だから――」

慕ってくれる皆が遠ざかるのは、朧も寂しく、辛かった。だから――

「兄弟を、作ってくれてありがとう……きっと、あの子も寂しくなくなる」

今ここに来てくれた弟の、なんと心強いことか。
姫は潤む瞳をこらえて、精一杯の笑みを見せた。

「ほんに、ほんに、ありがとう……」
「…勿体のう、ございます」

言葉に隠された想いの意味に気づかぬままに若者は、姫のあまりの喜びぶりに幸せを噛み締める。

「ふふっ、不思議じゃのう。なんだか以前にもこのような話をした気がするのだけど……」
「え」
「いいえ、きっと気のせいですね。忘れておくれ」
「……」





小四郎は、頷きながら少しだけ昔に想いを馳せる。




あれはまだ、二人が幼いころのこと。
小四郎は、もともと伊賀の者ではなかった。天膳に連れて来られた出自の分からぬ幼子。
それが小四郎だった。

そして、どこの里でもそうであろうが、裏切りというものにあった伊賀の里は新しい物を好まない。
忍ということもあるだろうが、彼らの世界は頑なに閉ざされていて外界を受け入れようとはしないのだ。
しかし重鎮である天膳が連れてきたとなれば、面だって文句を言える者はまずいない。
表立っては普通の扱いを受けるものの、あのころの小四郎には自分の主、天膳意外の者と口を利けることが適わなかった。

これではいかぬとお幻は言った。一度受け入れたからには心身ともに伊賀のものにせねばならぬと。
天膳は最初渋っていたが、結局はお幻の意見に賛同し、小四郎を彼女の孫――朧と共に教育を受けさせることとなる。

それはとても誉れ高いことなのだが、あの頃の小四郎にはそんなことはどうだって良かった。

自分には天膳だけがいればいいのであって、他の者に何を言われようが構わなかったのである。
小四郎の世界も、伊賀の里と同じように外界を遮断していたと言える。

そして、おそらく、これこそが天膳の思惑だったやもしれぬ。
定かではないが、少なからずお幻はそれを危惧した。
子どもながらにして秀でた才能の持ち主であることを既に見抜いていたからである。

そのような事情を知らぬままに出会った二人。それが朧と小四郎だった。

当初、出自の知れぬおのこを姫さまに近づけるなど、と多くのものがお幻に詰め寄った。
しかし、朧の天真爛漫ぶりと寡黙な小四郎の性格は大人たちが思っていた以上に波長の良さを見せる。
というよりも、彼女の行動に振り回されていく内に、小四郎も何とはなしに彼女を慈しむべき人であることを心で知っていったようだった。
それには大人たちも認めざるおえなくなり、いつしか誰も文句は言わなくなっていった。




そんなある日のこと。


「姫さま、また池を見ておられるのですか?」
「うん。小四郎もいっしょにどうじゃ?」

誘われるままにともに並んで池を眺めても、いつもと変わらぬようにそこには血に染まったような赤や、紅と白の斑模様、かと思えば黒と茶が混ざったような醜い色合いのものなど沢山の鯉がいるばかりだ。
餌をくれ、と彼らの近くにやってくる鯉たちの人懐こさに苦笑しながら、それでもすぐに飽きてしまった小四郎は、じぃっと楽しそうな顔でそれを見つめる姫を不思議に思った。

「いつも、いつも、見ておられるようですが鯉がお好きなのですか?」
「ん?んー好きじゃ!」
「飽きませんか?」
「ぴかぴかじゃもの!」

お日様のような笑顔を向けられると何故か幸せな気持ちになってくる。
きっと、鱗が陽の光に反射して光る様を言っているのだろう。そう解釈した。
しかし、小四郎にはいつもと同じ光景が些か億劫に思える。

「せまいところでこんなにいっぱいいるのでは、鯉も可哀想ですね」
「かわいそう?」
「はい。俺ならもっと広いところで泳ぎたいと思います。どこか、だれもいない場所で、いっぱいいっぱい泳ぐのです」

それはきっと、とても気持ちが良いだろう。
幼い小四郎は広い広い水の中を誰にも邪魔されずに力いっぱい泳ぐのを想像してみて嬉しくなる。
名案を語ったと誇らしげに思うが、朧はしばらく黙って何も言ってはくれなかった。

「…そうか……」

急に低くなった姫の声音に驚いて、顔を覗き込もうとするとそれより先に朧はすくっと立ち上がった。

「姫さま…?」
「なあ、小四郎。一人は、さみしいと思わんか?」
「さみしい、ですか」
「そう」

少年は言われた意味がわからないというようにきょとんとする。
沢山の鯉が泳ぐ池を見つめながら、少女は愛らしい顔に少しだけ陰りを含んで言った。

「小四郎、人も、けものも同じじゃ。一人ではさみしいし、一匹でもさみしい。だから……」

息を一息ついてから、幼い姫はくるりと小四郎を振り返り、その手を取って真摯に彼の瞳を覗き込んだ。

「だから、お前はどこにもいかないでおくれ。ずっと、ずっと、そばにいておくれ」

それはいつものように花が咲くような明るい笑顔ではなく、雨の降る前の曇り空のような泣き出しそうな顔。

「……はい」

驚きながらも無意識に返事をしたのは、いつものように明るい笑顔に戻ってほしいとただその一念でだった。




その後、しばらくして姫君の側女が流行り病で亡くなったのを知った。

本物の母のように慕っていたその女性に先立たれて、姫は寂しさを持て余していたのかもしれない。
そう気づいたとき、姫の悲しみに気づけなかったことを、小四郎は心底悔いた。
それと同時に幼いおのこは生涯この小さな姫を自らの手でお守りしようと決意したのだ。







そして、十数年の時を経て今。




彼の姫君は共にいる相手を見つけた。自分ではない、相手を。

「こ、小四郎…その、今日のこと、すまなんだ。
あのように、無理に言わせたかったわけではなかったのに――
だが、お前の伊賀を思う気持ち、決して軽んじているわけではないの。ついついお前の優しさ甘えてしまって――こんな私を、どうか許しておくれ」
「いえ、そんな」
主人に謝られるなどあってはならないことだと小四郎は狼狽する。
「弦之介さまとのことは私が自ら説き伏せていかねばならぬこと。なのに、臆病風に吹かれていてはなりませんね」
「……ほんに、甲賀弦之介を想ってらっしゃるのですね……」
「え」
「……俺はそろそろ戻ります。姫様もお早くお休みなさいますよう…失礼致す」
「あ、小四郎!」
挨拶と共にすぐさま闇夜に消え去った若者。
呼び止める間も与えなかったのはやはり未だ認めてくれてはいないからだろう。
時間が必要だ。自分の想いを知ってもらうための時間が。並々ならぬ道だと知りながら選んだのは自分。
けれど今は、弦之介とは違う意味で大事な男のその姿を思い出しながら朧は微笑んだ。

「……ほんに、ありがとう…」

愛する弟に幸あれと、精一杯祈りながら。










夜の森を宛もなく走りながら、小四郎は唇を噛み締めていた。

決して認めた訳ではない。
決して憎くない訳ではない。

しかし、襖越しに聞こえたのは、弦之介の名。
あの愛おしそうな声音を聞けば、彼の人に必要なのは誰かは明白。

(もう、寂しくはないのだろうか?)

それなら、今度は自分が耐えよう
愛しい姫の御為に。
喉の渇きはいつしか消えた。だが、何故かそれに寂寥感を覚える。
己の瞳から流れ落ちた雫に小四郎は気づかぬ振りをした。
















「さあ、お考えをお聞かせ願おうか、お幻様」

翌朝、再度会合は開かれた。皆の顔は決して冴えず、緊迫感すら漂う部屋に閉じられた障子の向こうから、場違いな鳥のさえずりが響く。
詰め寄る天膳にお幻は何事を言おうと口を聞いたがその音が外に出るよりも、朧が声を発す方が先であった。

「聞いておくれ」
「……なんですかな、朧さま。貴女様もお考えを改めたと言うことですか?」

そんなわけがあるまいと、丸分かりの皮肉を滲ませて天膳は口の端を上げる。

「違う。その逆じゃ。お前たちに私の想いを知って貰いたいのじゃ」

「ふん、想い?昨夜も言いましたように、貴女が仰っているのは只の夢物語、世迷言に過ぎません。ここにいる全員がそう思っておりまする」

天膳はそう言いながらその場に集いし皆の顔を顎で指した。
その顔は全員曇っており、困ったような雰囲気を持ち合わせていた。

やはり、若い二人が手に手をとったところで長い年月で凝り固まったその心は容易には解けぬのであろう。
朧にすら分かる、二つの里の怨恨。

しかし――

『朧殿、伊賀と甲賀の長きに渡る宿怨を今こそ我らが解き放ちましょう』

あの方は、言ったのだ。
心に火を灯すような暖かいあの瞳で。
そして――
ちらりと視線をやれば、目を瞑り何も語らぬ若者がいた。

「どうですかな、朧さ――」
「世迷言ではない。私は弦之助様と、この道を選んだのじゃ」

凛とした声が天膳の責めを破る。
朧は天膳の容貌を透き通るようなあの瞳で見据え、その口が動く前に、周囲を聖なる眼で見渡して――家臣に頭を下げた。

「お、朧さま!?」

朱絹がお止めください、と叫ぶ。
他の者も、そしてお幻ですら驚きに 目を見開く。

「頼む、この通りじゃ。どうか、どうかお前たちも分かっておくれ…!伊賀と甲賀の長きに渡る憎しみを今が消し去る時なのじゃ!」

震える声で真摯に語る朧。
そのしっかりと下げられた頭を見つめ、皆苦々しく顔を顰める。
どうすれば良いのか分からない。そんな表情だった。

「朧、顔を上げよ」

いたたまれない空気の中、それまで押し黙っていたお幻が唐突に口を開く。言われたままにゆっくりと顔を上げる孫娘を見据えながら、老婆は問うた。

「それは修羅道にも匹敵する険しき道となろう。それを覚悟で行くというか」

鋭く細めた瞳に見つめられた朧は、しっかりと頷いた。
その言葉を噛み締めながら、少女は言う。

「もとより、覚悟の上にございます」

「……そうか」

お幻はどこか嬉しげな口調でそう言うと、寂しそうに微笑んだ。

「ならば、わしからは何も言うことはあるまいて」
「な!お幻様…!」

食って掛かろうとする男を視線で諌めて、老婆は皆の顔をひとつずつ見ていく。

「天膳。それに皆も、何分若い二人じゃ、お前たちが不安に思うも仕方あるまい。道を違えることもあろう、もしかしたらこの先憎しみ合わねばならないようになるやもしれぬ…だが――」

里の長は何かを回顧するように目を閉じてから、はっきりと言った。

「真に朧を思うのであれば、信じてやるも一つの道ぞ。わしは二人の祝言を認めようと思う」

最終判決とも言えるそれに、結局誰も何も言うことは出来なかった。
朧は両手をついて感謝の意を示し、小四郎の方を向いた。
笑いかけても自分を見つめる静かな瞳は何も語ってはくれなかったが、逸らすこともしなかった。







その後、やはり反発する伊賀衆を説得しながらも、祝言の準備で一気に甲賀、伊賀総出で慌しくなった。
着実に未来を見据える二人の目には争いのない平和な両里が映る。
愛する者と共にある、世界を――



しかし、そんな合間を縫って逢瀬を重ねる恋人同士を両里とも心よく思う者は少ない。

今日も今日とて僅かな牽制の気を放つ護衛に弦之介は密かに息を吐く。
「朧殿は、ほんに伊賀の者に好かれておいでじゃ」
自分の後方にいる忍のことを言っているのであろうことは疎い姫にも理解でき、「すみません」と朧は謝る。
「私があまりに頼りないものですから、身を案じてのことなのでしょう。弦之介さまと一緒だから大丈夫、と再三申しておるのですが――」
困ったように嘆息する少女に、自分と共にあるからこそ心配なのだろう、と青年は内心で苦笑する。
「しかし、弦之介さま。伊賀者たちを嫌わないでくださいまし。とても優しい者たちなのですよ」
「無論です。そう言えば、今日ついておられる小四郎殿は、確か朧殿とは兄弟同然の仲だとか…」
「ええ、そうです。私の大事な――弟です」

その会話を離れた場所から聞いてないふりをしてしっかり耳に入れていた小四郎は苦笑する。
大事な弟。
それなら側にいても、きっとかまわぬだろう、と。

「とてもとても、優しい子です。以前紹介した朱絹と同じく、私の良き理解者なのですよ」
「ほう」
「とても不器用な男ですが、私が悲しんでいると慰めてくれたりと、優しいところもありまして。
いつも助けてもらっています」
花の咲くような笑顔で語る少女に何を思ったか男は似合わぬはっきりとはしない口調で呟いた。
「……それはちと……」
「?すみません、弦之介さま。後ろの方がよく聞こえませんでした。今なんと?」
「いや、……何でもござらん」

弦之介の続きの言葉を聞き逃した朧は「何でしょう?」と不思議そうに小首を捻っていたが、
しっかり耳にした伊賀忍は、ざまあみろと密かにほくそ笑んだ。

「そうだ、折角ですから弦之介さまに紹介しましょう。小四郎!」
「はい、朧さま」

こちらへおいでと手を振る姫の向こうには、穏やかな顔で自分を見据える男がいる。
無表情に近寄りながら、あの憎い男に旋風かまいたちをかましたら、どうなるだろうかと、小四郎は密かに思った。
もしも、姫を泣かせるようなことがあれば、許しはしない。

今度はそう、――弟として。





――それは不戦の約定が解かれる僅かに前の話であった。












一人の男に戻るのは、戦いの最中、手負いの時に






と、まあ長くてすみません!
原稿用紙33枚分ですので結構長いですね。
丸っきり妄想族です;;

書いてくうちに失恋しちゃってた小四郎。
小四郎が軽く偽者臭いのは許してください;
小四郎、好きだなぁ……vv

感想、コメントなど下さると泣いて喜びまする!




スポンサーサイト

Comment

Comment_form

管理者のみ表示。 | 非公開コメント投稿可能です。

左サイドMenu

プロフィール

わんこのよめいり

Author:わんこのよめいり
長期間放置してましたが、一念発起でもう一度してみようかと。
アラサーになってしまったオタク女子ですw
基本雑食なので結構なんでもイケます。

コメント、TB随時受付中です♪

基本リンクフリーですが一言申し出下さると嬉しいです。

最近の記事

FC2カウンター

フリーエリア

ブロとも申請フォーム

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。